2021年の注目物流企業

 2021年の物流動向の続きで、今回は独自に注目企業にスポットを当ててみる。

 日本通運、ヤマトホールディングス、SGホールディングスそして、日立物流に続いて売上高が高いのが西濃運輸を中核とするセイノーホールディングスで、約6300億円(2020年3月期)を計上している。西濃運輸はその昔、福山通運、フットワークエクスプレス(日本運送)と並んで路線御三家と呼ばれていた。渋谷昇氏が創業した福山通運は、現在は小丸成洋社長の下、ダブル連結トラックを導入するなど、幹線輸送に力を入れており、売上高は約3000億円(2019年度)と、西濃ホールディングスには水をあけられているが、順調に業績を上げてきている。一方、御三家のもう一つのフットワークエクスプレスだが、残念ながら2001年に民事再生法を申請、事実上倒産してしまった。同社はその後、2009年にオーストラリア物流最大手のトール・ホールディングスに買収され、2012年にトールエクスプレスジャパンに社名変更して現在に至っている。

 さて、肝心のセイノーホールディングスだが、これまで路線事業をメインに手掛けてきたが、データやロボット、AIなどの技術を駆使し、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進していくことを発表しており、そういう意味では、今後が注目される。

 そのほかに今年度注目される企業としては、SBSホールディングスがある。同社は1976年に、佐川急便を退社した鎌田正彦氏が関東即配という会社を設立したのが始まりだ。その後、雪印乳業の物流会社である雪印物流をグループ化したのを皮切りに、東急グループの東急ロジスティックや日本ビクターの物流会社ビクターロジスティクスなど、メーカーの物流子会社を次々にグループ化しており、2018年には、リコーの物流子会社であるリコーロジスティクスのグループ化に成功する。これで一気に物流会社として名声を挙げた同社は、昨年11月には東芝の物流子会社である東芝ロジスティクスのグループ化にも成功する。

 リコーロジ年商約750億円、東芝ロジ約900億円を加え、同社の売上げは4000億円を超える可能性もあり、そうなると、一気に物流企業売上高トップ10入りを果たすことになる。

 軽貨物会社としてスタートし、初代であり僅か45年で並みいる物流大手と肩を並べられるのは、物流業界においても画期的なことだといえる。リコーロジの買収では、同社はセイノーホールディングスとコンペで競った。当初、リコー側は物流業界でも名門であるセイノーホールディングスに傾いていたというが、結果的には、そのセイノーを押しのけ、同社がグループ化に成功した。これにはトップの姿勢に違いがあったとの理由もあるようだが、物流大手名門を押しのける同社には、飛ぶ鳥を落とす勢いが感じられる。

 グループ化してどれだけ相乗効果が出せるのかが今後の同社の課題だといえるが、まだまだメーカー系の物流子会社への買収意欲は高く、今後も同社から目が離せない。

 これまで、M&Aが比較的少ないといわれた物流業界だが、人手不足や後継者不足などから、同社のように、M&Aを成長戦略の柱に置く企業もでてきた。

 言い方はどうかと思うが、手っ取り早く会社を拡大させるには、M&Aはある意味もってこいの戦略だといえる。一方で、コンプライアンスが求められ、サービスが多様化する中で、これまでのような物流子会社がこれまでのように生き残っていけるのか、とても難しい時代に入ってきており、身売りされるところも今後出てくると予想されており、M&A市場は活況を呈する可能性も否定できない。今年度の物流の動向は、そうしたM&Aの動きも加わり、変化を見せるのではないだろうか。

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