佐川と日本郵便が宅配で協業!

SGホールディングス傘下の佐川急便と日本郵政傘下の日本郵便が、宅配分野において、協業で基本合意したと発表、記者会見を開いた。

 会見には、佐川急便の本村正秀社長と日本郵便の衣川和秀社長が出席し、協業についての概要や経緯を説明した。本村、衣川両社長を見て思わずどっちがどっちの社長なのだろうと感じた。というのも、大変失礼かもしれないが、両社のイメージと社長の風貌が一致しなかったからだ。佐川が衣川社長で、日本郵便が本村社長だったらしっくり来たのだが。

 まあ、余談はさておいて、これまで競合してきた大手が今度は協業するという、まさに「昨日の敵は今日の友」となったわけだが、これまでなら考えられなかったことが今は当たり前のように起こり、もはや驚かなくなってきた。それだけ、環境が変化してきているのだ。

 特に宅配市場は、新型コロナウイルス感染症によって大きく変わった。国の緊急事態宣言によって不要不急の外出が抑えられた。当初は買い物までも規制がかかっていた。こうした自粛活動によって、巣ごもり需要が拡大、宅配荷物が溢れた。

 工業製品や原料など、BtoBが苦戦する中で、宅配に強いヤマトや佐川は大きく売り上げを伸ばした。その一方で、人手不足がサービスの拡充が間に合わず、弱点が表面化している。

 加えて、アマゾンというアメリカの巨大資本が独自の物流構築を虎視眈々と狙い進めている。

 こうした環境にある中で、佐川と日本郵便は、弱点を補いあうことで穴を塞ぎ、自社の強みをさらに生かす協業という選択をしたといえる。

 今回の協業では、「小型宅配便」、「国際荷物輸送」、「クール宅配便」の3分野からスタートする。小型宅配便では、佐川が日本郵便の「ゆうパケット」を活用する。同サービスは、縦・横・厚さが60センチ以内の荷物で、郵便ポストにも投函できる荷物で、郵便受けに届けられるサービス。

 日本郵便が得意とするところで、佐川が活用することで、相乗効果を狙う。

 国際貨物輸送も、佐川が日本郵便の持つEMS(国際スピード郵便)を活用して、荷物を世界各国へ届ける。

 一方、クール宅配便は、日本郵便が佐川の持つ飛脚クール便(冷凍・冷蔵サービス)を活用して自社の荷物を届ける。

 両社は今後、ワーキングチームを結成し、さらに協業を進めていくとしている。

 両社の協業のきっかけは、今年初めに、日本郵便側から佐川急便側に話が持ち掛けられたことだったという。課題であった保冷品の配送で、日本郵便が佐川に委託の話を持ち掛けた。これにより、佐川も課題である小型荷物の宅配、そして国際貨物の配送を日本郵便に委託するという双方の課題を補い合う協業という手法が生まれたという。

 今回の両社の協業は、宅配市場で群を抜くヤマトを見据えた戦略でもある。まあ、もともとヤマトは小倉昌男時代から、国と喧嘩をしてきたので、日本郵便とヤマトは決して仲のいい間柄ではないのだが。

 さてさて、この協業は果たしてうまくいくのか。企業風土が違う会社同士の協業や資本提携は、うまくいかないケースが多い。日立物流と佐川急便の提携解消は、まさにそうした風土の違いが原因の一つともいわれている。

 こうした中で、お互いが妥協しあい、弱点を補え合えるか。どこまで歩み寄れるかで成否が決まる。そういう意味では、ワーキングチームの取り組みが今後、カギになるといえる。

 両社は資本提携について全く考えていないとしているが、独走を続けるヤマト、そして黒船が来ている中で、単なる協業で現況を乗り越えていけるか。はたまたさらに進んで、業界再編の引き金になるのか。

 注目の集まるニュースには違いない。

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