長時間労働改善で「副業」という新たな問題が!

 2024年問題を前に、長時間労働の改善に取り組むトラック業界。コンプライアンス経営が求められるようになり、労働時間の管理はいまや運送事業者の必須課題となっている。 しかしながら、労働時間の改善を進める一方で、新たな問題が浮上してきた。

 副業問題である。これまで、長時間労働によって、ドライバーの生活できる賃金を維持してきたが、労働時間の削減で、自ずと請け負えない仕事も出てくる。そのため、労働時間を削減する代わりに売上げが減る。それを補うには運賃を上げてもらわねばならないが、運賃が市場に左右される中でそう簡単に上がるわけではない。稼ぎが悪くなれば、そのしわ寄せは、結局ドライバーに降りかかる。労働時間が削減される代わりにドライバーの賃金が減少してしまっているのだ。

 ここに持ち上がってきたのが、副業だ。労働時間が削減されても、賃金が同時に下がればこれまでの生活が崩れてしまう。ドライバーにも日々の生活があり、賃金の減少は大きな痛手ともなる。その減った分を副業で稼ぐ、そんな動きが懸念されているのだ。

 実際に、ある事業者では、通常、大手路線事業者で社員として定期の仕事をこなしながら、空いた時間に、同社で働いていると、同社を副業として活用している人が存在しているという。

 明らかにハードワークだが、大手路線事業者、受け入れる中小事業者、双方に知らぬ存ぜぬの姿勢で、あくまでドライバーが会社に黙って勝手に働いているとの認識だ。

 ただ、これでは業界が本来、取り組むべきところの労働時間の改善にはつながっていない。甲の事業者で規制がかかったので、乙の事業者でその分をカバーしていることに過ぎず、両社合わせた労働時間は減少しておらず、むしろ増加しているようで、まさに本末転倒である。労働時間管理を進める会社側のリスクヘッジにしかならない。

 さらに、事故を起こした時の責任問題にもなる。甲で勤務中に事故を起こせば、通常は甲の責任の上で処理が行われるが、乙での勤務中だと、乙の責任でそのまま処理ができるのか、しなければいけないのか。また、事故を起こしたドライバーが長時間労働になっていたら、その責任はどちらが負うのか。具体的な調査の上で責任の所在が示され、その責任を負うことになるのだろうが、問題は根深く、ややこしい。

 簡単に取り組める一方で、何かあった時に処理が難しい、副業は、そんな複雑な問題をはらんでいるのだ。 

 コンプライアンスを考えれば、労働時間の管理は必要だが、副業でカバーするというやり方はお門違いで、本来の趣旨とは全くかけ離れている。雇用する側の事業者も、される側のドライバーも、「長く働けず稼げないので副業も仕方がない」で済ましてはいけない。たとえ労働時間を削減したとしても、ドライバーが副業せずに、これまでの稼ぎを維持できることこそ重要である。副業を認めることよりも、運賃を上げて労働時間が減った分をそれで補うというやり方をしなければいけない。

 それには根気強い運賃交渉しかない。副業が当たり前にしてはいけない。魅力をつけるためには、本業だけで飯を食える、そんな業界にしていかねばならない。事業者に背負わされた十字架はそれだけ固く、そして重いのだ。

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