燃料高騰を成長の糧に!

軽油価格がじわじわと上昇しており、事業者の懐を直撃しだしている。トラックにとって軽油は走行するためになくてはならない存在だ。それだけに安定供給が望まれるが、現状はというと決してそうはなっていない。 

そもそも原油は先物取引で売買される。そのため、需要と供給のバランスが崩れれば、すぐに価格に跳ね返ってくる。今の価格の値上がりはコロナが深く影響している。

これまでコロナで経済活動が抑制されてきたが、ワクチンが開発され、世界に出回っていったことで、感染が収まりつつある。そうなると、これまで抑制されていたものが解放されていく。人の動きが活発になれば、自ずと経済も活発化していく。

経済の活性化とともに、原油の需要は増加する。一方、OPECなどの石油産出国はコロナで需要が減っていることを背景に減産を開始、これまで生産を抑え調整してきた。需要増に増産するといっても、供給が間に合わなければ逼迫し、価格に反映される。 

需要と供給のバランスが崩れ、原油価格は上昇しているのだ。先物市場で1バレル80ドルを超えるなど、価格は上昇を続けている。それがそのまま、軽油価格へと転嫁されてくるので、市場価格はおのずと値上がりを続けることになる。

2008年も、原油の高騰でトラック業界は大きな影響を受けていた。全国一斉行動として、北は北海道、南は沖縄まで、全国2万人が全国各地で窮状を訴えた。

当時の政権与党である自民党本部には、1400名の事業者が集結、政府に要望を行うとともに、日比谷公園に向けて窮状を訴えるシュプレヒコールも行った。 

この時、燃料サーチャージ制の導入が強く叫ばれたし、その機運も高まりつつあった。実際に荷主と交渉して、サーチャージを導入したという事業者も見受けられたが、しかしそれはごく僅かで、ほとんどは導入できないままに、その後、燃料価格が落ち着いていくとともに、サーチャージ制の言葉自体も聞かれなくなっていった。

そして今、また燃料の高騰を招いており、予断を許さない状況が続いている。再び、燃料サーチャージ制の導入が指摘されるようになってきているが、過去を知る関係者らは冷ややかで、2008年当時と比べても熱量は感じられない。

それにしても、修理費とタイヤ費と合わせて運行3費と言われ、トラック運行に欠かせない重要な燃料が、先物取引で動く価格に左右されることに、業界の危うさを禁じ得ない。

業界では、経済活動の根幹を支えており、コロナ禍ではエッセンシャルワーカーとして物資の輸送を行っている、そんな大事な業界だとした上で、安定した量を安定した価格で供給できる体制を、国を挙げて準備すべきとの声も聞かれる。確かに燃料価格が安定すれば、物流が安定する可能性も否定できないが、商行為、とりわけBtoBに国の関与は考えにくい。

ということは、燃料高騰分は自社で吸収するしかない。運賃に転嫁できるかがカギとなる。事業者個々が交渉力を持たねばならない。そのためには、何が必要かを考えなければいけない。輸送品質を高めたり、数字でモノが言えるよう管理の徹底を図ったりと、やるべきことはまだまだある。燃料高騰を言い訳ではなく、自社の成長に変えることが重要なのかもしれない。

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