自動運転のトラックが荷物を運ぶ日

ドライバー不足が深刻化し、経済の根幹を支える物流に支障をきたせば、経済活動にも多大な影響が出る。物流関係者の間では、数年前からこんなことが指摘されるようになった。一方で、そうした指摘とともに「自動運転」が脚光を浴びるようになった。「ゆくゆくはドライバー不足の救世主になるかもしれない」、業界では、そんな言葉を口にする関係者もいる。

 通信技術をはじめ、技術革新が進み、一昔前は、夢の世界や絵空事、さらにそれ以前には想像さえできなかった「自動運転」が、現実味を帯びてきた。国交省や経産省といった国の機関もかかわり、その技術開発に注目が集まっている。

 自動運転は現在、レベル0〜レベル5の6段階で進められており、レベル0は全ての操作を人の手で行うというもので、レベル1がブレーキ・アクセル操作やハンドル操作のいずれかをある条件下で人に代わってシステムが部分的に行うというもの。そしてレベル2が、ブレーキ・アクセル操作やハンドル操作の両方をシステムが部分的に行う。レベル3になって、作業継続が困難な場合は人が介入しなければならないというものの、全ての運転操作を一定の条件下で人に代わってシステムが実行することになる。さらにレベル4では、ある条件下で人の介入なしにシステムがすべてを担うようになり、最終的なレベル5では、条件もなくすべてをシステムが担うということになる。  

 人が操作せずにシステムがすべてをこなすということを自動運転と考えると、レベル3以上ということがいえる。現在の日本の自動運転レベルは3に近い2というところで、ブレーキやアクセル、ハンドル操作も人の手なしにシステムで可能という車両がでてきている。技術的には、レベル3はクリアできる水準ともいえる。いや、技術だけなら4や5ももしかするとクリアできているのかもしれない。

 トラックでも、レベル3の機能を備えた車両がお目見えしている。一度、私も乗車させてもらい、車線逸脱を自動で修正する光景を目の当たりにしたが、技術の進歩を肌で感じた。すでに高速道路での隊列走行も進められており、21年度にも高速道での自動運転サービスが開始されるという。

 運送業でも着々と自動運転の準備が進められているところだが、あくまで高速道での隊列走行で、一般道での自動運転はまだまだ先のことだといえる。では、一体、今後の進み具合はどうなるのかというと、ある高級官僚は、「社会がどれだけ求めるかによって進捗スピードも変わる」と指摘する。いわば、自動運転が実現する日は、世の中のニーズによって早まりもすれば遅まることもあるということになる。

 5年後の25年度にレベル4を実現するとして現在、開発が進められている自動運転。トラックにおいては、高速道での隊列走行を皮切りに、その後どこまで進むかというところだが、ドライバー不足で物流が滞る、あるいは、人件費の高騰で輸送費がかさみ、荷主企業の経営を圧迫するなど、取り巻く環境の変化で問題が表面化すれば、自動運転への関心が高まり、実現に向けて法整備や技術開発が加速されるといえる。  「人が運転しないトラックが荷物を運ぶ」。業界でもまだ先のことと考える人のほうが断然に多い。しかしながら、そんな日が来るのは、ひょっとして、遠い未来ではなく、近い将来のことかもしれない。

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